イタリアふれあい待ち歩き


イタリアの観光情報 ― 北イタリアの芸術
 



長い歴史がイタリアの文化を形成した3つの基本要因は、“愛”、“生活”と“楽しみ”です。その中の“楽しみ”となっているのが、イタリアでは、美食、芸術、スポーツにファッションです。ここでは、その中の芸術を取り上げます、絵画、彫刻、音楽は、イタリアの歴史と人を語る上で忘れてはいけないものであると感じるのは誰もが同じだと思います。イタリアの各地には、美術館、博物館及びオペラ座があります。ミラノ市街はもちろんのことミラノ周辺の各地にも有名な美術館やオペラ座が散在しています。イタリアで発生したオペラは、もちろん、今やイタリアだけにとどまらず、ヨーロッパ中に広がり、ウィーン、パリ、ロンドン等の主要都市には必ずオペラ座があります。でも、どこの国でも、殆どのオペラはイタリア語なのです。

これらの芸術も、“食”の楽しみと同様に、各地がその特徴を生かし、“おらが街が一番”の状態になっています。各都市が一つの国であったイタリアでは、戦いだけでなく、芸術や“食”でも他の都市に負けないものであることが第一と考えていた結果が、我々のような観光客に更なる楽しみを与えてくれるのだと思います。

 

ミラノとミラノ周辺の美術館

ミラノの美術館

ミラノで一番有名な美術館はブレラ美術館ですが、それ以上に有名なのは、サンタ・マリア・デッラ・グラッツェ教会のドミニコ修道院食堂の壁に描かれたダヴィンチの“最後の晩餐”です。おそらく、パリのモナリザに匹敵する有名な絵画だと思います。その他にもミラノには美術館がいくつもあります。ガイドブックに載っていない美術館を入れると数十にのぼると思います。アンブロジアーナ美術館ポルディ・ペッツォーリ博物館が特に有名です。

 

忘れてはいけない彫刻は、スフォルツェスコ城内にある博物館のミケランジェロ作“未完のピエタ”です。ミケランジェロといえば、ローマのサン・ピエトロ聖堂にある“ピエタ”、システィーナ礼拝堂の“最後の審判”を含む天井画とフィレンツェの“ダヴィデ像”が有名ですが、これらの完成した作品では感じられないものがここにあります。完全主義者であるミケランジェロが未完成のまま残したこの“未完のピエタ”には、何かがあるのだと思って見ると更に興味が出てきます。

 

絵画は、何と言ってもキリスト教を題材にしたものが圧倒的です。特に多いのは、聖母子、キリスト受難とピエタです。これらの絵画には芸術性と神秘性が感じられます。歴代の画家のすばらしさとイタリアの芸術文化が花開いたといえるでしょう。同じ場面を描いた絵でも、描かれた時代や画家によって変わっています。そこには、その時代の社会情勢や画家の意思が汲み取れることもありますので、見ていて興味は尽きません。但し、中には、教会が依頼して書かせたと思われる聖書にない題材も多く見受けられます。絵画に描くことによって矛盾の多い教会の教えを正当化しているのです。

ミラノ周辺の美術館

ミラノ周辺に目を移すと各都市に美術館があるのがわかります。絵画の数を数えたら大変な数です。主要都市だけでなく小さな街(村)にも美術館があります。ここでは、特に印象に残ったパルマの美術館だけ取り上げます。本当に、個人的な意見でしかないのですが、この美術館には、コレージョとパルミジャニーノのパルマ出身の2人の画家の絵があります。コレージョは、教会の採光塔等に描いたフレスコ画で有名ですが、美術館の絵画もすばらしいものです。パルミジャニーノは、一番好きな画家です。特に、パルマ美術館にある“トルコの女奴隷”は、何度でも見たい絵の一つです。この2人に代表されるパルマ出身の画家の絵は“パルマ派”と呼ばれています。このように、各都市にはそこの出身の画家がいて、“xxx派”(ヴェネツィア派、フィレンツェ派、シエナ派等)として彼らの絵がその土地の誇りとなっています。それがイタリアなのです。

 

美術館ばかりではなく、教会の内部や宮殿の内部も美術館以上です。フレスコ画、絵画、彫刻が所狭しに見ることが出来ます。マントヴァのドゥカーレ宮殿とテ宮殿はその代表です。ドゥカーレ宮殿の“結婚の間”にある家族の肖像は有名ですが、それよりも“結婚の間”の天井に描かれたフレスコ画がみごとです。これらはマントヴァのマンテーニャとジュリオ・ロマーナの作品です。その他にもイタリア各都市には有名な画家がいっぱいです。とても覚え切れません。でも、画家の名前を覚えるより、実際の絵画や彫刻をたくさん見て気持ち(心)を豊かにする事が大事だと思います。

聖母マリアの顔

フィレンツェのウフィツィ美術館にあるポッティチェリの絵画について書ます。当時もそうだったのでしょうが、世の男性にとって、フィレンツェに花開いたルネッサンスはとてもありがたいものだったのではないでしょうか。特に、ボッティチェリの曲線美は見事としか言いようがありません。天才であるダ・ヴィンチも素晴らしいのですが、やはり、完全主義で科学者のダ・ヴィンチでは、世の男性を満足させられません。“プリマヴェイラ”や“ヴィーナス誕生”が、男性にとって、やはり、ウフィツィ美術館の目玉なのです。

しかし、よく見ると、まだまだ、宗教画から脱皮しきれていないような気がします。ミケランジェロのダヴィデ像は、あの大胆なポーズと美しい肉体でわかるように、それまでの宗教の世界から完全に脱皮しているように見えます。でも、ポッティチェリのこの2つの絵画はまだ中間段階だと思います。ポッティチェリの作品には、聖母子の絵が多いのですが、彼が描いたマリア様の顔立ちは誰よりも素晴らしいと思います。そのお顔がこの2つの絵画のヴィーナスの顔と同じです。特に、“プリマヴェイラ”の真ん中のヴィーナスの顔を見てください。クールで冷たい感じでしかもやさしさを感じます。弥勒菩薩のお顔そっくりなのです。顔だけじゃありません。右手を見てください。やさしく手を差し伸べている弥勒菩薩がそこにいるように感じます。そして、それがポッティチェリの描くマリア様のお顔でもあるのです。冷たい感じでも優しさのある女性の顔は、やはり、世界中どこでも神聖なものを感じてしまいます。ポッティチェリは、曲線美だけでなくマリア様のお顔を書かせても天才だったのです。ウフィツィ美術館に行ったら、ポッティチェリの聖母子の作品も一緒に見てください。そしてマリア様のお顔をじっくりと見てきてください。

 

ミラノの近くでもポッティチェリのマリア様のお顔を見ることが出来ます。ピアチェンツァの市立美術館にポッティチェリの“聖母子と聖ヨハネ”の円形絵画が展示されています。何故、こんなところにこんな絵画があるのだろうと思うほど、この絵のマリア様のお顔は素晴らしいのです。でも、他の画家でも同じことが言えますが、赤ちゃん(キリスト)の顔はあまり好きにはなれません。赤ちゃんの顔を神様に見せるように描くのは、どんな画家でも無理なことなのだと思います。


 

ミラノとミラノ周辺のオペラ座


彫刻と絵画の芸術性に勝るとも劣らない音楽もイタリアにはあります。陽気なイタリア人は音楽好きで、街を歩いていると音楽が聞こえます。ミラノの地下鉄の中でもびっくりするほど上手に演奏する子供がいます。その音楽の中でも王様といえるのがオペラです。誰もが知っていることは、オペラといえばイタリアで、その中でもミラノのスカラ座はオペラの殿堂です。でも、そう言うのはミラノの人だけです。オペラはイタリア各地で上演され、各都市の人たちが、自分の土地のオペラがイタリアで一番だと信じています。

 

ミラノのスカラ座は長い間の改修を終えて、いまやフル稼働しています。毎年の127日がオペラの初日で、この日に入場する人は完全正装です。でも初日に限らずほとんどの人が正装してオペラを見に来ます。オペラを見に行くことは、ミラノ市民にとって最高の行事ですので、最高のファッションを着て大いに見栄を張って見に行きます。でも、オペラの券はそう簡単には手に入りません。インターネットで発売しますが、発売とほぼ同時に完売になるのが普通です。従って、イタリア人得意の個人的なコネを使って入手するしかありません。でも、2009年12月のカルメンと翌年1月のリゴレットを何とか入手しようとしたのですが、コネでも駄目でした。どうしても見たい人は、当日売りの天井桟敷券を入手するのが一番賢い方法です。それでも、朝に登録して、夕方やっとチケットが入手ができるので1日がかりです。でも、天井桟敷だからと言って馬鹿にはできません。オペラの音楽を聴くのに一番良い席は天井桟敷なのです。馬蹄形の劇場は上に行くほど音響効果が良く、音楽を批評するときは天井桟敷で聞くのだそうです。昔から、天井桟敷の観客が一番の批評家であると言われています。

 

ミラノ以外のオペラ座で有名なのは、夏限定ですが、ヴェローナのローマ時代の遺跡でもあるアリーナのオペラ公演は有名です。6月後半から8月いっぱいまで週に3,4回あり、しかも、アリーナは1万人くらいは入れますので、比較的、チケットの入手は難しくありません。104ユーロくらいで良い席が取れます。開演は夜9時で、オペラは12時過ぎまで続きますので、ヴェローナにホテルを取らないといけません。プログラムも馴染みのある演目となっている上に、演出も、スカラ座に比べるとエンターテインメントに力を入れているので、素人でも十分に楽しめます。
 

また、やはり、芸術の都といわれているパルマのオペラも有名です。何しろ、下記の如くヴェルディの出身地ですから格上の意識もあるようです。エミリア・ロマーニャ州の各都市は、全部が、我こそは芸術の街であると主張しているのです。

でも、前述したように、エミリア・ロマーニャ州に限らず、各地で自分達のオペラ座がイタリアで一番だと信じていますから、大きな声では言えません。

 

北イタリアの音楽家


イタリアには著名な作曲家がたくさんいますが、特に有名なのは、やはりオペラの作曲家です。「ラ・トラヴィアータ」、「リゴレット」、「アイーダ」等でもっとも有名なのはジュゼッペ・ヴェルディで、現在でもその人気は衰えを見ません。「ラ・ポエーム」、「蝶々夫人」、「トゥーランドット」のプッチーニがその後に続きます。ヴェルディはパルマの出身(パルマ市街ではなく田舎の街です)でプッチーニはトスカーナ州のルッカの出身です。ルッカまでをミラノの周辺に含めるかどうかは別にして、やはり、オペラの殿堂、スカラ座があるミラノからそれほど遠くではありません。また、「セビリアの理髪師」や「ウィリアム・テル」で有名なロッシーニは、ウルビーノの近くペサーロの出身ですが、ボローニャの音楽学校で学んでいます。

 

指揮者として最も有名なのは、アルトゥーロ・トスカニーニです。彼もパルマ出身です。1898年から10年間、ミラノのスカラ座に音楽監督として君臨していました。1898以前はパルマのオペラ座であるレッジョ劇場で音楽監督を務めていました。パルマには彼の博物館と生家があり、観光名所となっています。

 

“神に祝福された声”と言われて、20世紀でもっとも偉大なテノール歌手であるルチアーノ・ハヴァロッティはパルマとボローニャの間にある世界遺産の街モデナ出身です。1968年にミラノのスカラ座デビューを果たして、2006年のトリノ・オリンピック開会式の「トゥーランドット」が彼の人生最後のステージとなりました。葬儀はモデナのドゥオモ大聖堂で2007年に行われました。この葬儀には10万人が参列したとのことです。彼はイタリアの英雄だったのです。



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