イタリアふれあい待ち歩き


イタリアの観光情報 ― 自然との共存



ミラノ周辺は自然が豊かです。ローマ時代の遺跡や中世の宮殿や教会に興味が偏りがちですが、イタリアの自然も観光資源の一つです。特に、ローマ時代の遺跡や中世の建物とマッチした自然の美しさはすばらしく、イタリア観光では自然を無視するわけには行きません。特に、北イタリアでは、スイス・オーストリア・フランスから連なるアルプスの山々と渓谷から始まり、氷河が作った湖とそれから流れ出している川、ジェノヴァまで連なる山々と渓谷、それに広大なロンバルディア平野は、北イタリアの観光には欠かすことの出来ないものです。これらの景色を見ながらの列車やバスの旅は、もう一つの楽しみの一つです。

 

アルプスの山々

イタリアのアルプスで有名な高い山々は、モンブラン(モンテ・ビアンコ)、マッターホルン(チェルビーノ)とモンテ・ローザです。それに、世界遺産の登録されているレーティッシュ鉄道周辺とドロミティも有名です。登山家ではありませんので、これらの山々に登るわけではなく遠くから眺めることが出来れば満足してしまいます。天気の良い日にアルプスの麓の街まで行き、雄大な自然とそこに埋もれている麓の街の歴史的な建物を見られたら、それに勝るものはないのではないでしょうか。

 

ミラノ周辺で、これらの自然に触れることができるのは湖水地方の街を訪ねたときです。有名なリゾート地でヴィラが立ち並ぶコモ湖、ボッロメーオ諸島で有名なマッジョーレ湖、一番小さいがきれいな水のオルタ湖、大部分がスイス領のルガーノ湖、それに一番大きな湖であるガルダ湖が、ミラノからの日帰り範囲内にあります。これらの湖の街を訪ねるとき列車の車窓から見えるアルプスの山々は雄大で美しく、列車の旅の楽しさを倍増してくれます。

 

モンテ・ローザは一番近くに見える高い山です。天気が良い日には、ミラノ中央駅からノヴァーラに向かう列車の中から見ることが出来ます。もっと近くで見たいときは、ノヴァーラから更に北へ向かう列車(ドモドッソーラ行き、ビエッラ行き、ヴァラッロ・セシア行き)に乗ると、更に近づいて行きます。但し、あまり近くまで行くと、手前の山にかくれてしまいます。どこに行くわけでもなく、ただ、山を見るためにだけの為に列車の旅をするのも良いでしょう。

 

湖水地方

湖水地方の街に着くと、囲まれた周りの山々に隠れてアルプスの山々は見えにくくなりますが、山々に囲まれて、澄んだ水をたっぷりと蓄えた湖も観光客を癒してくれます。湖の周りは切り立った山々が湖面までせまり、その斜面には中世の宮殿や教会が建てられています。何故、中世の建物は周りの自然に溶け込むようにマッチしているのか本当に不思議です。きっと、当時の人たちが自然との共存が避けられないものであったことを理解していたことがその理由だと思います。ガルダ湖のシルミオーネにあるローマ時代のヴィラの遺跡は、イタリア人が持つ自然との共存の遺跡でもあります。

 

湖水地方で、もう一つ忘れてはいけないのが、サクロ・モンテや修道院の存在です。人里はなれた山の上に自然と一体化してひっそりと建てられているこれらの歴史遺産は、その建物の価値を数倍に高めています。険しい道をこれらの歴史遺産を訪ねて歩いて行くのは、そこに到達したときに味わうことができる数倍にも膨れ上がった満足感を得るためなのかもしれません。しかし、建設機械もない何百年も前にこれらの建物を建てた理由は何だったのでしょうか。宗教的な理由以外にも現世に暮らす人間では思いもつかないようなものがそこにあったのだと思います。

 

湖水地方の最後にオルタ湖に触れたいと思います。オルタ湖は個人的に一番好きな湖です。サクロ・モンテやサン・ジュリオ島等の観光名所もすばらしいのですが、湖の澄んだ水の歴史が特に印象に残っています。20世紀後半に、一度は生物が死に絶えた湖がここまでの自然な状態の戻ったことは、人類の将来を明るく輝かしいものに変えてくれる力を持っています。ここにも、イタリア人の自然との共存を見ることが出来ます。

 

イタリアン・リヴィエラ

山の次は海です。ミラノから港町のジェノヴァまでは普通列車でも1時間40分ですので、それほど遠くはありませんが、ジェノヴァまで行くと同じイタリアとは思えません。冬でも温暖な気候がそこにはあります。ジェノヴァの東西に広がったリグリア海に面する海岸線は、イタリアン・リヴィエラと呼ばれています。ジェノヴァから西側はフランス国境までを西リヴィエラ、ジェノヴァの東はピサの手前までを東リヴィエラと呼んでいます。東リヴィエラには音楽祭で有名なサン・レモ、西リヴィエラには世界遺産のチンクエ・テッレがあります。西リヴィエラは、海岸線に少しだけ平地があり、そこから切り立ったがけになっているところが多いのですが、東リヴィエラは、海岸線からいきなり切り立った崖になっているところが多くなっています。ですから、海水浴なら西へ、景色を求めるなら東へ、と言うことになっています。どちらにしても、海岸線の道に棕櫚が並ぶ温暖なイタリアン・リヴィエラには、いつ行っても多くの観光客で賑わっています。

 

この地方は、海や景色だけでなく、観光資源が豊富なところでもあります。イタリアン・リヴィエラの海岸線には、フランスのマルセイユからローマに通じるAurelia街道が走り、ローマ時代から重要な交通路となっていました。従って、この地方では、世界遺産に登録されているジェノヴァの宮殿群とチンクエ・テッレ以外にもたくさんの歴史建造物を見ることが出来ます。大きな街にはジェノヴァ商人の宮殿があり、古い大きな教会があります。それに加えてジェノヴァ共和国時代に立てられたお城がいろいろなところにあります。ほとんどの岬の高台にはお城があり、ライヴァルであったピサとの抗争やサラセン人の海賊との抗争から街々を守っていたのです。海岸線からちょっと奥まったところの山々にも中世のお城がたくさんあります。チンクエ・テッレのようなカラフルな漁師街もほとんどの海岸線で見ることが出来ます。

 

東西に走るAurelia街道に加えて、東リヴィエラには、ローマからイギリスのカンタベリーまで繋がっているFrancigena街道が南北に通っていました。サルザーナの東で今は内陸地の片田舎になっているルーニはローマ時代から紀元1000年までは10万人の市民が住んでいた大都会でした。ヨーロッパ各地からこのFrancigena街道を通ってローマまで行く巡礼者は中世を過ぎても後が絶えなかったと言われています。このFrancigena街道沿いにも街道と街を守るためのお城が街中や丘の上に点在しています。

 

このように、この地方も、海、山、渓谷の自然遺産が豊富なだけでなく、自然遺産と調和の取れた数多くの歴史遺産があり、それが1年中観光客をひきつけているのです。

 

列車の車窓

世界遺産に登録されているレーティッシュ鉄道やドロミティのレノン鉄道、それにアオスタからフランスに抜ける鉄道は有名ですが、その他にも、北イタリアの自然を十分に車窓から楽しめる列車があります。

 

上記にも書きましたが、ピエモンテ州ノヴァーラから北方面への列車はどれもすばらしい景色が続きます。それらの列車の最終地点であるドモドッソーラビエッラヴァラッロ・セシアは、正に、アルプスの麓の街であり、駅には山並みが迫っています。ひっそりとした小さな街並はとても情緒がある上に歴史もあります。石造りの古い教会やサクロ・モンテもとても印象的です。イタリア人の大好きなトレッキングコースも豊富に揃っています。ドモドッソーラからスイス領のロカルノまではアルプスの渓谷沿いに観光鉄道も走っています。

 

また、あまり有名ではありませんが、ブレーシャから出ているLe Nordもイセーラ湖畔からヴァルカモニカ(カモニカ渓谷)を通り、オーリオ川と山々のすばらしい景色を見ることが出来ます。途中には、イタリアの最初の世界遺産でもあるヴァルカモニカの岩壁線画群のあるカーポ・ディ・ポンテを通ります。氷河で削れれた岩肌が露出した山肌の中には、石造りのシンプルな教会が見えます。

 

ミラノの南方向にも山々があります。ミラノからリグリア州へ抜ける列車は全てこれらの山々を抜けていかなくてはいけません。ミラノからピエモンテ州の南部にあるモンフェッラート(石灰の山)を通りリグリア州サヴォーナへ抜ける列車、ミラノからリグリア州ジェノヴァへの列車、及びブレーシャからフィデンツァ(パルマ)を通ってアペニン山脈を潜り抜けてリグリア州のラ・スペツィア(トスカーナ州のピサまで行く列車もあります)まで行く列車も、山々の間の渓谷を抜けて走り、すばらしい景色を見せてくれます。

 

海の景色を楽しむなら、リグリア海の海岸線イタリアン・リヴィエラを走る列車です。西リヴィエラならジェノヴァからヴェンティミリア、東リヴィエラならジェノヴァからピサまで列車が走っています。海と切り立った崖とその崖にへばりつくような家々と岬ごとに見えるお城が列車の窓から見えます。

 

バスの車窓

バスの旅も捨てがたいものがあります。景色を見るなら、やはり、列車よりもスピードの遅いバスの方が良いと思います。それに、途中で立ち寄る名前も知らない街や村を通るたびに、そこの景色と乗り降りするお客さんから、その雰囲気を少しだけですが味わうことも出来ます。

 

マントヴァからサッビオネータまでの1時間強の道のりは、ロンバルディア平野の中を走るのですが、地平線まで平らな田畑の平野を、近隣の村々に立ち寄りながら進みます。小さな田舎の村には、大きな街と同じような古い教会やお城があり、村の人たちがくつろぐ広場もちゃんとあります。そして、そのバスの終点でもあり究極の街が城壁で囲まれたサッビオネータになります。

 

ピアチェンツァからボッビオに向かうバスは渓谷地帯を走ります。渓谷の真ん中を走る川を何度も渡りながら、渓谷の両側にある小さな村々を訪ねながら進んでいきます。回りには、それほど高くはありませんがきれいな山々とその山腹にある自然に溶け込んでいるような家々が見えます。それらの小さな村に着くたびに、目的地までの旅をやめて、その村で降りてしまいたい衝動に駆られます。そんな中にあるボッビオの街は、バスに揺られて高まっていく期待を裏切ることはない街でした。こんな田舎の街なのに、周りの自然とマッチした歴史遺産をその中に抱えています。

 

イタリアン・リヴィエラのバスの旅も、海を眺めながら岬をめぐる豪華な景色が待っています。ここの路線バスは、他とは違って観光客を意識していますので、日曜・休日でも、平日並みのバスがあります。ところによっては、日曜・休日のほうが平日よりバスの本数が多いところもあります。それに、ほとんどのバスがバスに乗ってからチケットを購入できます。ですから、いつも、たくさんの観光客がバスを利用していますので気楽にバスに乗ることが出来ます。

 

田舎のバスの旅は、計画は難しいのですが、バスはきれいで快適です。時刻表を調査して乗り降りの場所さえはっきりさせれば、バス旅行も悪いものではありません。運転手さんがキーですので、乗るときには運転手さんに挨拶を忘れないようにするとともに、はっきりと降りるところを確認してもらい、運転手さんが見えるところに乗っているようにしましょう。



前のページへ             次のページへ

イタリアの情報へ