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イタリアの観光情報 ― サクロ・モンテ巡礼の旅
はじめに
 



サクロ・モンテとは聖なる山との意味で、14,5世紀に、イスラム教の支配下にあった聖地エルサレムへの巡礼がままならないことから、エルサレムを模して造営されたものです。各サクロ・モンテは聖母受胎告知・キリストの降誕から受難、復活、聖母被昇天までのストーリー(サクロ・モンテに見られるキリストの生涯は次章参照)を礼拝堂(チャペル)毎に絵画と陶磁の彫像(テラコッタ)で描いてあります。もともとSantuario(聖域)と呼ばれてその地域で崇拝されていた教会(又はその中に安置された彫像)を拡張する形で造営されたものが多く、今でも、その地域全体又は中心となっている教会のエリアをSantuarioと呼んでいることが多いようです。

 

1480年ごろ、最初にヴァルセシア(Valsesia)ヴァラッロVarallo)を見下ろす丘の上にエルサレムを模してこの聖なる山が造営され、その後、プロテスタントの宗教改革に対抗し、カトリックの信仰をより強固なものにするために、このヴァラッロをモデルとして、CreaOrtaVareseOropaOssuccioGhiffaDomodossolaValperga8つの聖山が造営されました。これらは、北イタリアのマッジョーレ湖、コモ湖周辺の山々に点在するキリスト教の巡礼地となりました。この合計9つのサクロ・モンテが複数形でサクリ・モンティと呼ばれて2003年に世界遺産に登録されています。

 

世界遺産に登録されているサクロ・モンテは、下記の9ケ所です。

1.       ヴァラッロのサクロ・モンテ

2.       サンタ・マリア・アッスンタ(聖母マリア被昇天)のサクロ・モンテ(クレア)

3.       サン・フランチェスコのサクロ・モンテ(オルタ)

4.       “ロザリオの祈り”のサクロ・モンテ(ヴァレーゼ)

5.       ベアータ・ヴェルジネ(聖母マリア)のサクロ・モンテ, 又はSantuario di Nostra Signora di Oropa (オローパの聖母マリアの聖域) (ビエッラ)

6.       ベアータ・ヴェルジネ・ディ・ソッコルソ(ソッコルソ丘の聖母マリア)のサクロ・モンテ(オッスッチョ)

7.       サンタ・トリニタ(三位一体)のサクロ・モンテ -Santuario della Trinita-(ギッファ)

8.       カルヴァリオ丘のサクロ・モンテ - Sacro Monte Calvario - (ドモドッソラ)

9.       ベルモンテ(美しい山)のサクロ・モンテ(ヴァルペルガ、カナヴェーゼ)

                                                                   

                                  サクロ・モンテの地図
上記の
9ケ所を調べたところ、2は交通の便が悪くかなり綿密な計画が必要です。9は、ミラノからは遠く、トリノの北でありトリノに宿泊するプランにする必要があります。67は、それぞれ、コモ湖とマッジョーレ湖の湖畔にありますので、コモ湖、マッジョーレ湖に宿泊するプランにした方が良いと思います。但し、日帰りも可能です。6及びその他の5ケ所は、列車とバスの利用でミラノから日帰りが出来るところにあります。実際に、279以外の6ヶ所のサクロ・モンテを、ミラノからの日帰りで訪ねてきました。

 

上記でお解かりのように、サクロ・モンテは丘や山の上にあります。また、すべてが湖水地方と山岳地帯にありますので、それほど簡単にいけるところではありません。ツアーでは観光バスを利用しています。そんなところに、列車と定期バスを利用して、残りは徒歩で行くのですから、入念な計画を立てないととても日帰りができそうにありません。特に、土、日曜日のバス路線は、本数が極端に少なくなるので計画を立てるのもそれほど簡単ではありません。その代わり、苦労してサクロ・モンテにたどり着くと、サクロ・モンテの観光だけでなく雄大な自然を一緒に堪能できることになりますので、その感動は更に大きなものとなります。それに加えて、その周辺に思わぬ掘り出し物の観光資源が見つかる可能性も高いところです。上記にも書きましたように、サクロ・モンテが造営されたところは、もともとSantuario(聖域)なのですから、聖域としての何か(自然環境や神秘性)があるところなのです。

 

巡礼の旅を読むとわかるように、掘り出し物の観光資源の中には、サクロ・モンテをしのぐようなものもありました。オルタ湖のように、何度も訪ねたくなるような観光地とめぐり合うことも出来ました。実際には、“巡礼”とは名ばかりで、観光旅行或いはハイキングなのです。もちろん、昔の人は、険しい山道を一歩一歩登って巡礼したのでしょうが、現在では、家族連れでドライブがてら来ているイタリア人を多く見かけました。

 

カトリックの国であるイタリアでは、Santuario(聖域)と呼ばれている地域は、上記の9ヵ所のサクロ・モンテ以外にもあります。いくつあるかは定かではありませんが、かなりの数の聖域があると思います。これらの聖域には、それぞれの言い伝えがあり、その言い伝えに基づいたキリストや聖母マリアの像が安置されていて、昔から巡礼者が訪れて、その地域の信仰の中心地となっています。特に、その3で訪ねた「黒いマドンナ」で有名なオローパの周辺の山里には聖母マリアの聖域が11ヵ所あります。要するに、サクロ・モンテとは、これらの昔から信仰のあつかったSantuario(聖域)をうまく利用して、宗教改革に対抗する設備を造営した物と言えると思います。

 

いずれの聖域も人里はなれた山奥にありますので、それらの聖域への巡礼には、サクロ・モンテ巡礼以上に、かなりの体力を必要とするところが多くなっています。サクロ・モンテの巡礼では物足りない方には、次の段階として、これらの聖域を訪ね歩いてはいかがでしょうか。オローパでは、観光客は別として、実際の巡礼者は、サクロ・モンテではなく、この聖域に安置されている「黒いマドンナ」を目的で礼拝に来ている聖母マリア信仰の人がほとんどです。ここでは、サクロ・モンテは観光目的になってしまっているようです。



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