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イタリアの観光情報 ― ミラノ周辺の教会



ミラノ周辺の教会

ミラノ周辺の教会及び個人的に好きな教会(ミラノも含みます)について書きます。

1.           ラヴェンナのサンヴィットーレ聖堂

ラヴェンナは小さな街で、この街の中の古キリスト教の教会群は世界遺産に登録されています。その中でも、一番素晴らしいのはサン・ヴィターレ聖堂です。ここは、527年に建設が開始されて547年に完成している8角形のレンガ造りの教会です。教会の構造自体もミラノ周辺の教会とは全く違います。まだ見たことはありませんが、イスタンブールの聖ソフィア大聖堂を小型にしたようなものだと思います。正面にファサードがあるいつものイタリアの聖堂ではありません。付属している修道院の回廊も静かな雰囲気があり、何となくもっと居たいような気持ちになるところでした。回廊の回りにはかなり古そうな教会の遺跡も展示されています。でも、ここではなんと言っても、内部のモザイク画です。聖堂内に入ると直ぐに正面のモザイクが目に入ってきました。その素晴らしさに、もう、何を言ってよいのか言葉が出てきません。

2.           マントヴァのサンタンドレア教会

ご存知のようにマントヴァは世界遺産に登録されています。ですから、見るべきものはたくさんあります。その中でもお気に入りなのが、このサンタンドレア教会です。大きくて外見も立派な教会です。入口は大きく、まるで凱旋門のようです。真ん中にクーポラがあるのですが、入口が大きいのと手前の広場が小さすぎるため正面からは見ることが出来ません。教会の中に入ると、このクーポラを中心に4方向に礼拝堂のある単身廊の教会でルネッサンス建築であることがわかります。ミラノのドゥオモ(ゴシック建築)を始め大きな教会は、色々と見ていますが、ほとんどが、三身廊(ミラノのドゥオモは五身廊)であり、これほどの大きさなのに単身廊であることに驚かされます。単身廊であるので、内部には柱がありません。このことが、教会内部をすっきりとさせて、内部の神聖さが教会全体に広がっています。教会の裏手にも広場がありますが、裏から見た教会は、どちらかと言うとロマネスク建築様式のようにシンプルな重厚感にあふれています。クーポラは後から建てられたものですが、そこには完全な調和が見られます。また、クーポラに画かれたフレスコ画もすばらしいものです。

3.           シエナ大聖堂

シエナのドゥオモをここに入れないとイタリアのどこを見てきたのだと言われそうです。真っ白なゴシック建築の大理石のファサードに感動しない人はいないと思います。この大聖堂は、フィレンツェのドゥオモに対抗して拡張工事を始めたのですが、資金難で中途で頓挫してしまいました。途中まで建造された建物は大聖堂の付属美術館となっています。この美術館を含めてシエナ大聖堂と考えるとランクはもっと上になるかもしれません。確かにミラノやフィレンツェのドゥオモに比べると小さいかもしれませんが、その分、造りは繊細になっています。特に、床の装飾は見事です。

4.           アクィレイアの総主教大聖堂

この大聖堂は世界遺産にその名が登録されています。その理由は何と言っても、ローマ時代の聖堂の床のモザイクがそのまま残されていることにあります。10世紀にローマ時代の聖堂の上に建てられたのですが、地震で壊されて13世紀に再建された建物が現存しています。但し、クリプトは10世紀のまま残されていて、壁と天井の全面が当時のフレスコ画で埋め尽くされています。床のモザイクは、13世紀の建物の完成後に発見されたため、13世紀の建物の床より低い位置にあります。そのために、建物の柱はその基礎までが露になっているのです。そうまでして、このローマ時代の床を利用したのは、そのモザイクがキリスト教の教えを伝えているからです。ローマ時代に、言語の違う他民族への布教のために描かれたキリスト教のストーリーなのです。13世紀の建物の中には、10世紀のクリプトと56世紀のローマ時代の聖堂のモザイク床があるので、この大聖堂を見るだけでキリスト教の歴史を感じとることができるのです。

5.           ヴィジェーヴァノのドゥオモ

ヴィジェーヴァノはミラノの東にある小さな街です。この小さな街には、信じられないようなきれいで調和の取れた広場(ドゥカーレ広場)があります。この広場の設計にはあのダ・ヴィンチが関わっているのです。この長方形のドゥカーレ広場の短い方の一辺にドゥオモが建っています。このドゥオモは広場と少しずれていて、それをごまかす為にファザードが弧になっています。それによりこのファザードと広場との調和が取れていることが、このランクに位置づけた理由です。即ち、性格にはドゥオモを選んだのではなくドゥオモを含んだドゥカーレ広場を選んだことになります。イタリアで一番の広場といえば、世界遺産に登録されているヴェネツィアのサン・マルコ広場ですが、個人的には、ヴィジェーヴァノのドゥカーレ広場のほうが好きです。もちろん、同じく世界遺産に登録されているモデナのグランデ広場よりも好きです。

6.           パヴィアのチェルトーザ

パヴィアの修道院のファザードは、ミラノのドゥオモが田舎に建っているようなものです。こんなところに、何故こんな豪華な教会を建てたのでしょうか(ミラノのヴィスコンティ家聖廟として建てられたそうですが)。日本人の理解を超えています。そもそも、修道院とは、質素であるはずです。特に、辺鄙な田園地帯に建っている修道院は、修道士が自給自足するとともに、その地域の生産性に貢献することが目的の質素な設備が普通です。ここを訪れてそんな考えが吹き飛ばされました。ファザードも豪華なら教会内部も豪華です。それに加えて、きれいな2つの大小の中庭はとても印象的でした。この修道院が、本当に地域に貢献しているかどうかは別にして、このランクに入るのは仕方のないところです。

7.           ベルガモのサンタ・マリア・マッジョーレ教会

マントヴァのサンタンドレア教会と同じくルネッサンス建築ですが、街にある教会と違い湖水地方の教会は、山から取った岩を砕いた石で作られていますので、外観に趣があります。大きな教会を1周して外観を見た後に中に入るとその豪華さには驚きを飛び越えて感動してしまいます。また、付属しているコッレオーニ礼拝堂の美しい外観と豪華な内装も“すばらしい”の一言です。ここもドゥオモが隣に建っているのですが、この街の誇りはドゥオモではなくこの教会です。ベスト5に一番近い教会です。

8.           ブレーシアのロトンダ(旧ドゥオモ)

この教会も忘れられない教会のひとつです。外観は円筒形のシンプルなロマネスク建築様式となっていて、ただ古いだけで何の変哲もありません。それなのに、中に入ると神聖さを感じるだけでなく華やかさまで感じてしまいます。中に入って、「ごめんなさい」と言いたくなる気持ちでした。冷静な気持ちで見ると、まず、内装が外見と全く違います。一部は外見通りのところもありますが、ほとんどは形状も色も外見からは想像もつかないものです。祭壇は豪華さまであります。それも外見を含めた質素な部分との調和が取れています。ベスト10には絶対に入ります。マントヴァの人たちに、隣にある新ドゥオモの人気がない理由が良くわかります。

9.           ヴァラッロのマドンナ・デッラ・グラッツェ教会

この教会も、中に入って感動した教会の一つで忘れられません。外見は古いロマネスク建築で、ファサードもありませんし、屋根は瓦葺の単身廊の教会です。女子修道院が付属していて、小さな回廊が教会の横にあります。如何にも、古くて壊れそうな石造りの教会です。中に入ると、天上は木造です。それなのに、中の雰囲気は神聖さに包まれています。中に入ったら誰でも感動を覚えると思います。何といっても、正面の奥まったところにある礼拝堂と身廊の境の壁に並べられている21枚の絵画に圧倒されます。真ん中に磔のキリストがあり、回りには20の聖書の物語が描かれています。正面の礼拝堂にはこの教会の信者以外には入れませんが、中でお祈りをしていた数人の修道女の人たちがすごく印象に残っています。狭い身廊の片側にも礼拝堂が並んでいて教会全体の神聖さを引き立てています。ヴァラッロのサクロ・モンテに行くロープウェイの駅の手前にありますので、絶対に寄って見ていく価値があります。実は、ロープウェイの駅員さんに、ぜひ、見て来たほうが良いと薦められて見に行ったので、駅員さんには非常に感謝しています。

10.   クレマのサンタ・マリア・デッレ・クローチェ教会

クレマの旧市街に入らず、市街の北約1キロにサンタ・マリア・デッレ・クローチェ教会は位置しています。歩くこと10分強で大きな素晴らしい教会が見えます。この教会は、ヴェネツィア共和国の支配時代である1490年に建てられたルネッサンス建築の教会です。やはり、ロマネスクやゴシック建築と違い芸術性の高い建築で、外観を見ているだけで感動します。ルネッサンス建築としてはミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラッツェ教会に引けをとることはない傑作です。内部も素晴らしいフレスコ画と神聖な雰囲気に包まれていました。貰った観光ガイドには、“サンタ・マリア・デッレ・クローチェ教会を見ずして、クレマの街を知っているとは言うな”と書かれていました。この教会を見てその意味は良くわかりました。

11.   ローディのインコロナータ教会

この教会もルネッサンス建築の傑作です。小さな教会ですが、ルネッサンス建築の至宝とも言われています。教会内部がすばらしく特に青を基調とした内装は、中に入った人全員に感動を与えてくれます。

12.   アッシジのサン・フランチェスコ聖堂

言わずと知れたイタリアの第2聖人である聖フランチェスコの総本山です。城壁で囲まれたアッシジ街の端にあり、アッシジの街を守っているような大きくて立派は聖堂です。この聖堂は2階建てになっていて、入口から入ると2階部分の聖堂となり、そこには壁一面に描かれたジョットのフレスコ画があります。この聖フランチェスコの生涯を描いたフレスコ画が、この世界遺産の目玉です。「小鳥に説教をする聖フランチェスコ」が一番有名ですが、いずれのフレスコ画も神聖であり心に届くように描かれています。1階部分は礼拝堂となっていますが、礼拝堂の地下には聖フランチェスコのお墓があり、観光客と巡礼者の列が絶えることはありません。

13.   パドヴァのサンタントニオ聖堂

パドヴァの聖人である聖アントニオはポルトガルのリスボン生まれでフランチェスコ会に属していました。布教の為にイタリアに移り住み、生涯をパドヴァで過ごしたそうです。生前には、数々の奇跡をもたらし、死後100年も経たずに列聖されました。その奇跡を今も信じている人達が、今でも世界中(ポルトガルとブラジルでは国の聖人として崇められています)からこの聖堂に巡礼に来ています。その数は、年間50万人とも言われています。この大きな聖堂の外観も素晴らしいのですが、内装も豪華な装飾で、ミラノのドゥオモに負けないくらいに埋め尽くされています。しかし、そこには総本山としての神聖さが溢れているのです。

14.   その他の印象に残った教会

それぞれの都市にその街のドゥオモがあり、街の人の誇りとなっています。また、ドゥオモだけでなくそれぞれの街には、他にもきれいな教会がいくつもあります。それらの教会の一つ一つにそれぞれの特徴があり、甲乙をつけるのは非常に難しいのですが、特に印象に残った教会がいくつかあります。

ボローニャのドゥオモは、大きさにおいてはミラノのドゥオモに負けないかもしれません。このドゥオモは、まだ、未完成なのです。ファサードはありませんので、レンガの表面が露出しています。それが、このドゥオモの存在感と重厚感を強調しているようです。このまま永久に未完成のままなのかもしれません。そのほうがボローニャのドゥオモとして適しているような気がします。

多少、贔屓目に見ていますが、ミラノの南の郊外にあるキアラヴァッレ修道院も印象に残っています。パヴィアの修道院と違い、こここそが辺鄙な田園地帯にある修道院の見本です。ゴシック建築の教会もすばらしいのですが、回廊に囲まれた中庭は必見です。

湖畔地方やアルプスの麓にある古い教会は石造りのロマネスク建築がいくつかあります。外見がミラノ等の街の教会と違って、質素で冷たい感じが印象深くて好きなのですが、その中でも特に印象に残っているのは、ブレーシャから1時間半北に行ったところにあるオーリオ川沿いの村カーポ・ディ・ポンテにあったサン・シーロ教会です。オーリオ川にせり出した崖の上に立てられた教会は芸術品です。

ミラノに戻りますが、最後にどうしても取り上げたいのが、ミラノのサンタ・マリア・デッラ・グラツェ教会です。この教会はダ・ヴィンチの最後の晩餐の影にかくれて教会そのものはあまり有名ではありませんが、ここも世界遺産の一部です。この教会の外見もすばらしいロンバルディア・ルネッサンス建築(もともとはロンバルディア・ゴシック建築だったそうです)ですが、外観も内装もとてもきれいな教会です。正に、ミラノにあるルネッサンス建築の代表です。


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