一人歩きの防犯 ― 日本の常識
 



日本人は、他の誰よりも、すり、置き引きや追いはぎのターゲットとなっています。その理由は3つあります。
1つ目は、日本人は現金をいっぱい持っていること。
2つ目は、世界一安全な国からきている日本人は、このようなことに馴れていないために行動に隙があることです。よく見るのは、日本人は、ところかまわず、平気で自分の荷物を自分の手元から離してしまうこと、及び、よく人前でも財布を出して中味を取り出したりしてしまうこと、があげられます。これらは、日本人がやってはいけないことの一番基本的なものです。
3つ目は、これは他の外国人と共通ですが、イタリア語ができないために俊敏な行動が取れないことです。
1つ目と3つ目は、いろいろな事情があるから仕方のないときもありますが、少なくとも2つ目については、個人個人が注意をしてこのような“周りに対して刺激するような不注意な行為”を慎まなくてはいけません。世界で一番安全な国で育った日本人に警戒心が足りないのは当然のことです。でも、日本以外の国では、毎日が犯罪との戦いなのです。世界に目を向けると、残念ながら日本のように安全な国はほとんどありません。世界的に考えると、日本が普通ではない(安全すぎる)のです。要するに、日本の常識は世界の常識ではありません

 

ミラノ又はミラノ周辺を一人歩きするのは楽しみの一つでもあります。でも、すり、置き引き、追いはぎ等に気をつけながら歩くのは、楽しみを半減してしまいます。それに、常に気を張って歩いていては、疲れるばかりです。でも、経験者だから言えるのですが、もし、自分がそのようなことに遭遇したら、その旅行の楽しみは全く消えてしまい、その旅行の想い出は最悪なものになってしまいます。それでは、旅行に来た価値が全くなくなってしまいます。海外での安全は本人だけの責任ですので、自分で何とかしなくてはいけません。では、どうしたら良いかをここから説明します。

 

何かを失くしたとき、盗まれたときに、日本と違うからといった言い訳は出来ても、取られたものは絶対に出てきません。最終的には、イタリアを悪者にして、もうイタリアには行かないことになるのが関の山です。そのような考えは全く間違いです。イタリアに限らず海外では、自分の身と持ち物は自分で守るのが大原則です。物を取られても、何かを置き忘れても自分が悪いのであり、物を取った人が悪いのでも、拾ったものを返さない人が悪いのでもありません。物を取られても、失くしても戻ってくるような日本は、世界中でも希少価値の国なのです。まず、日本の常識は世界の常識ではないことを認識して、日本の考えは捨てることから始めてください。日本人には不本意でしょうが、世界の常識とは下記の通りです。

(1)失くすことは本人の不注意である。従って、それが出てこなくても仕方がない。拾った人は、失くした人の不注意なのだから、わざわざ、失くした人を探し出して返す必要はないと考えて、拾った時点で自分の物と考える。

(2)すりや追いはぎに物を盗まれた場合も、盗まれた人の不注意であるので盗まれたものを本人に返す必要はない。但し、盗んだことは犯罪であるので、警察には犯人を見つけ出す責任はある。

 

上記のような考え方をすると、自然に、自己防衛を考えるようになってきます。そうならない人は海外に来る資格がありません。自己防衛の第一歩は、まず保険に入ることです。海外旅行者傷害保険は失くした場合も盗まれた場合もカバーしてくれます。次に、最初に書いたように、“周りに対して刺激するような不注意な行為”は行わないことです。そして、その次に来るのは、防犯グッズです。自分で満足するような防犯グッズを揃えると、安心できるので気持ちも楽になり、知らない街での一人歩きも楽しいものになります。では、どんな防犯グッズが良いのでしょうか。観光ガイドブック等では、何も考えずに、ポケット付の腹巻等の使い勝手の悪いものを平気で薦めてきます。もう少し考えてもらいたいものです。防犯グッズを考えるときの条件は、真夏の薄着です。腹巻をするとあせもができてしまうような真夏にはどんな防犯グッズが良いかを考えることです。下記がお奨めの防犯グッズです。使ってみてはいかがですか。

(1)安っぽい財布

夏はポケットの数が限られますので、財布を持っても内ポケットや腹巻に入れることは出来ません。ポシェットも良いのですが、ポシェットに入れておいても、追いはぎはポシェットごと切りとってしまうでしょう。痛い目に会って、その上、全財産を取られてしまいます。そうならないためには、いつものように財布はズボンの尻ポケットに入れておくのです。でも、その財布は安っぽい財布で、中には、必要最小限のお金(100ユーロ以下)だけで、貴重品も入れてはいけません。即ち、この財布は、万が一のとき、取られても良い財布です。もちろん、少ないながらもお金を入れておきますから、通常はこの財布を、お金を補充しながら使います。

(2)カード類入れ(ベルトに通すポシェット)

カードは、必要最小限として、絶対に財布とは分けて持つようにしてください。上記の財布が取られてもカードは取られないようにしてください。カードを盗まれると、カード会社への連絡もしなくてはいけないですし、何よりも、カードが使えなくなる事が一番の問題です。それでは、カードをどこに仕舞っておけば良いかですが、一番のお奨めは、ズボンのベルトに通すことができるポシェットです。これなら、そう簡単には取られません。ベルトかズボンかポシェット本体を引きちぎる以外には取れないからです。これだと通常のポシェットよりもかなり安全です。ここに、カードだけでなく、財布に補充する現金も入れて良いと思います。

(3)パスポートのコピー

パスポートは、飛行機に乗ったりしない限り持ち歩かないことが原則です。でも、何かあったときや、カードを使ったときの身分証明の代わりに提示を求められることがあります。そんなときのために、カラーコピーを作って持ち歩くことをお勧めします。コピーならとられても安心です。小さく畳んでカードと一緒にでも持っていてください。但し、両替のときはコピーでは認めてくれません。でも、両替は出来るだけしない方が良いと思います。現金を持ち歩くことになるだけでなく、両替手数料も取られてしまうので損してしまうことの方が大きいと思います。どうしても現金が必要な場合は、クレジットカードを使ってATMで引き落とす方が良いと思います。両替以外で本物のパスポートを要求された場合は、要求した人を疑ってかかったほうが良いと思います。 話がつかないときは、それなら、ポリス立会いで提示するとでも言えば良いと思います。もし、事故に遭って、ポリスに要求されたら、ホテルに一緒に来てもらって、ホテルのロビーで提示すれば良いのです。それほど重要なら、ホテルに来てくれるはずです。


この3つの防犯グッズだけです。これだけあればあなたは安心できます。要するに、取られてしまうことを前提とした防犯なのです。従って、安い財布は取られても良いものと考えてください。これはおとりなのですから。でも、そう考えているとなかなか取られないものです。もし、運悪くこの財布を取られたときには、危険を冒して価値のないものを盗んだ人を同情してあげるくらいの気持ちで構えていてください。

 

大きな荷物も持ち歩かないようにしてください。ホテルや荷物の一時預かりに預かってもらうことが一番です。大きな荷物を持っていると俊敏な動作が取れないだけでなく、いつも荷物を手元において置く必要があり、観光だけでなく、ショッピングや写真を撮ることにも集中できません。但し、荷物の一時預かりは、なかなか見つけることが難しいのであまり期待しないで下さい。ミラノ中央駅にある以外は見たことがありません。また、コインロッカーもほとんどありませんし、あっても、ほとんどが壊れています。

 

繰り返しますが、海外では、自分の身と持ち物は自分で守るのが原則です。ここは、日本ではないことを認識して、日本の感覚を捨てることから始めてください。世界一安全な国である日本は、世界標準から遠くかけ離れていることは、日本人以外の海外の人は、日本人のように神経質になってはいないことを見れば理解できると思います。従って、くれぐれも不注意な行動は慎むようにしてください。とは言っても、いつも気を張って歩いていたのでは、疲れてしまうし、楽しみも半減してしまいますので、防犯グッズを準備して、気持ちの上で安心して一人歩きできるようにしてください。安い財布くらい取られたって良いと思っていれば、人混みだろうと、地下鉄やバスだろうと、安心して入ることが出来ます。


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